2011年11月19日

日本におけるオープンソースのオフィスソフトの利用に関するレポートについて


OpenOffice.orgやLibreOfficeなどのオープンソースのオフィススイートを利用することに関するITRが作成したホワイトペーパーが公開されています。

オープンソース・ソフトウェアの現実
〜Officeスイート製品利用の現実解〜
http://www.itr.co.jp/library/public/ITR_WhitePaper/ITR_WP_C11060030.pdf

国内のオープンソースソフトウェアの使用者のコミュニティへの関わりについて興味深い考察がなされています。

「OSSを利用する場合は、利用者=開発者という観点に立って、コミュニティの一員として積極的にOSS製品への関与を深めていく姿勢が求められる。」

「利用者=貢献者」の方がより良い表現かもしれませんが、この観点は今後も大いに必要としているのではないかと思います。

その一方で、Microsoft Office と OpenOffice.org との脆弱性の比較の部分と、LibreOfficeの日本語版のコメントについては異なる意見があるのでここで紹介してみたいと思います。
このホワイトペーパーの中で、「Microsoft OfficeとOpenOfficeの脆弱性比較」というグラフがあって、「Microsoft OfficeXPに比べてOpenOfficeは良いが、Office2003以降では、Microsoft Officeの方が良い」という結論になっています。

その根拠となったものがこのブログです。
https://www.cert.org/blogs/certcc/2011/04/office_shootout_microsoft_offi.html

これは実際に発見された脆弱性の数の比較ではなく、MicrosoftがOffice 2010で採用したファズテストに基づいて、クラッシュした数が挙げられています。このテストでクラッシュするということは、潜在的な脆弱性があるのではないかということのようです。

ファズテストについてはこちらに日本語の説明があります。
http://blogs.technet.com/b/office2010_jp/archive/2011/06/28/fuzz-testing-in-office.aspx

Microsoftがこのテストを使って製品のチェックをしているというのであれば、Office 2010がファズテストによるクラッシュの数が最も少ないというのは当然のことのように思われます。

CERTはこの比較テストを2010年11月に行なわれています。その後約一年経過していますので、実際に発見された脆弱性についてはどうかと思い、JVNで検索してみました。

MS Office 2010:7件(1件は2010年11月以前のもの)

LibreOffice:2件

Office 2010 は2010年6月に発売されていて、LibreOfficeは2011年1月に最初の製品がリリースされました。対象期間に差がありますので単純な比較はできませんが、レポートのグラフで表現されたような大きな差はなく、むしろ逆ではないかと思える状況です。また発見された脆弱性の深刻度にも注目できます。

逆に、ファズテストに基づいてリリースされたOffice 2010にすでに7つの脆弱性が明らかになっているということは、ファズテストでのクラッシュした数がソフトの潜在的な脆弱性を測る指標として優れているかどうか、見方が分かれるところです。

なお、OpenOffice.orgについては、以下の脆弱性については修正されたものがリリースされていません。
http://jvndb.jvn.jp/ja/contents/2011/JVNDB-2011-002622.html
Apache OpenOffice.orgは現在使用できる製品をリリースしていませんので、セキュリティの観点からはOpenOffice.orgのユーザーはLibreOfficeへの移行が現在のベストな選択肢となるでしょう。


ITRのレポートの中で以下のようにLibreOfficeに言及している箇所もあります。

「現在、LibreOfficeもOpenOffice.org日本語プロジェクトで開発された日本語モジュールを利用しているため、日本語化を支援するボランティアが確保できない場合は、LibreOfficeも日本語版の出荷ができなくなってしまうことが危惧される。」

この点は不正確で、LibreOfficeの日本語版は最初からリリースされています。
確かに、OpenOffice.org 3.4については日本語版はリリースできない状況でした。(実際には3.4がリリースされることなく、OpenOffice.orgのプロジェクトは終わりました)こうした状況になったのはOpenOffice.orgの場合、
・日本語版のリリースは日本語プロジェクトに決定する権限があった
・日本語の翻訳プロジェクトのリードがいなければ翻訳プロジェクトを機能させない
・日本語の翻訳プロジェクトが機能していなければ翻訳に関して責任を持てないのでリリース許可をしない
という理由があったからです。

しかし、LibreOfficeの場合は、
・日本語版のリリースについては日本語のコミュニティに権限はない
・翻訳はパッケージされるときにできているところまでが取り込まれて、各言語版がリリースされる
・日本語の翻訳プロジェクトという組織がなくても、個人として直接翻訳に貢献できる
という点で、OpenOffice.orgとは大きく異なっています。

現在のところLibreOfficeの翻訳はメニューやダイアログの日本語に関しては100%の翻訳率です。そして新しいメニューやダイアログの翻訳だけでなく、既存の翻訳の改善も行われています。
もちろん翻訳するにも貢献者が必要ですから、何もしなくても日本語版がリリースされると考えるのは早計ですが、コミュニティの体制(官僚的かそうではないか)が大きく違っているのでOpenOffice.orgの時のようになるとは考えにくいのがLibreOfficeコミュニティの現況です。

posted by matuaki at 20:41| Comment(0) | TrackBack(0) | LibreOffice
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